コラム

私と寫眞 第二夜 「築地はベンツォールの夢を見るか」

私と寫眞 第二夜 「築地はベンツォールの夢を見るか」
auther : 営業開発部 佐藤芳孝
 
日本の台所、築地市場。
官民摩擦により、揺れる移転問題でメディアを騒がしている今、レンズを通して市場の姿を切り取ってみたい。
 
敷地面積230,836平方メートルの場内に足を踏み入れると、魚の独特の臭いに包まれたと感じる間もなく、所狭しとターレートラック(通称ターレー)が走り回っている光景に驚く。

 
事前に、「場内は無法地帯なので車両に気をつけること」、「場内は治外法権であり、すべてにおいて働く人が優先」と注意を受けていたが、人を避けることもなく敷地内を縦横無尽に走り回るターレーは、まるでバンコクで原付が道路を埋め尽くして走っている映像を彷彿とさせるほどである。
 
場内脇には魚河岸で働く人たちを見守ってきた水神社が佇む。
男たちはここで遥拝し、市場の守護神として崇敬している。

 
まぐろ卸売場に足を踏み入れると、5時半より始まるセリもすでに終わっており、8時時点ではすでに閑散としている。

 
壊れた手洗い場に荒くれ共の勇ましさを見る。

 
まぐろ卸売場と中卸場を隔てる薄暗い通路、ターレー、軽トラック、原付、リヤカーが無秩序に行き交う。
大きくカーブを描いた構造になっているのは、東京市場線という鉄道が過去に乗り入れていたためである。

 
中卸に入ると、ほとんどの店は片付けを始め、10時からの一般客向け商品も扱う一部のお店が準備を始めている。

 
中卸は一人が通れるくらいの路地でほとんどが占められ、広くてもターレー2台がギリギリすれ違える程度。

 
悠長にカメラを構えていると後ろから罵声が飛んでくる、ここはある意味戦場なのだ。
 
10時にもなると、ほとんどのお店は片付けを終える。

 
場内禁煙表示など気にもせず、あちらこちらで煙草を吸い、飯をがっつく男たち。

 
築地、そこは東京ワンダーランド
薄暗い空間に裸電球の下で威勢よく働く男たち。
東京にもこんな活気に溢れた場所と、屈強な男がいる。
ひとたびこの熱に触れてしまうと、近代施設の豊洲でこの男たちが働く姿を想像するのは難しい。
 
さて、今夜は大間のマグロを肴に、旨い日本酒でも呑もうではないか。
 
撮影地:築地市場
使用カメラ:Nikon D600
使用レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
※各画像下部のレンズ名はEタイプではなくGタイプの誤りです。
※プライバシー保護のため人物に目線を入れています。